部分矯正では、リテーナー(保定装置)の装着不足などが原因で、徐々に歯が移動して元に戻る「後戻り」を引き起こしてしまうことがあります。
せっかく長い時間と高額な費用をかけて理想の歯並びを手に入れても、元に戻ってしまったらショックですよね。
そこで本記事では、後戻りの原因や予防のポイント、後戻りが起きた時の対処法を詳しく解説します。
部分矯正で後戻りが起こる原因
後戻りが起こる原因はさまざまです。主な原因として「リテーナーの適切な使用ができていないこと」が挙げられます。
リテーナーは、矯正治療後の不安定な歯を固定する目的で使用する保定装置です。部分矯正の際には、後戻りが起こる原因を理解し、予防することが重要です。
保定不足
保定とは、矯正治療後に整えた歯並びを固定して安定させることです。
部分矯正は、以下の2つの治療で完了します。
- 動的治療:矯正装置で歯を動かして歯並びを整える(数ヶ月~1年程度)
- 保定治療:整えた歯並びをリテーナーで固定させる(1~3年程度)
後戻りの主な原因は「リテーナーの装着時間が短いこと」です。長い治療期間中に自己判断でリテーナーを取り外し、不安定な歯が移動して元に戻ってしまうことも少なくありません。
装着を怠ることなく、指示どおり1日の装着時間を守るようにしましょう。
噛み癖や舌癖
歯ぎしりや食いしばりなどの噛み癖は、歯に振動を与えて不安定な歯が揺らされたり、強い力が加わって歯がすり減ったりするため、後戻りの原因になります。
噛み癖は就寝中に無意識に起こるため、マウスピースを使用するなどの適切な処置を受けましょう。
また、舌で上下の前歯を押す、歯の間から舌を出すといった舌癖も、歯を押し出してしまうため、後戻りの原因になります。
舌癖の対処法として、MFT(口腔筋機能療法)という口周りの筋肉を鍛えるトレーニングがあり、舌の位置を正しくすることで後戻りを予防できます。
親知らずの影響
ほとんどの親知らずは、ほかの歯を押して生えるため、歯並びに影響を与えて後戻りの原因になることがあります。
そのため、矯正治療の際は親知らずの抜歯を検討することが重要です。
親知らずの抜歯には、以下のようなメリットがあります。
- 汚れがたまりやすく歯ブラシが届きにくい親知らずがないと、虫歯や歯周病になりにくい
- 矯正後に親知らずが歯並びに悪影響を及ぼす心配がなく、後戻りのリスクが減る
- 親知らずがない分、歯を並べるスペースを確保しやすい
親知らずがある場合は、矯正前に抜歯すべきか歯科医師と相談するとよいでしょう。
虫歯・歯周病
虫歯や歯周病は歯を支える骨や歯茎を弱くし、歯が不安定になって後戻りを起こすことがあります。
特に、矯正治療中や治療後は、歯磨きなどの口内ケアが不十分だと虫歯や歯周病のリスクが高まります。
矯正装置はマウスピース矯正の場合は取り外しができますが、ワイヤー矯正の場合は自分で取り外しができません。
矯正装置の周りは食べ物や歯垢がたまりやすいため、歯科医院で正しい歯磨き方法や食習慣の指導を受け、定期検診を継続して受けるようにしましょう。
部分矯正では治せない歯並び
部分矯正は咬み合わせの治療ができないため、以下の症例の場合は全体矯正を検討しましょう。
- 歯の重なりが大きい出っ歯(上の前歯が前に出ている)
- 口ゴボ(上下の前歯が前に出ている)
- 凹凸が大きい八重歯
- 反対咬合(上の歯より下の歯が前に出ている)
- 開咬(咬み合わせた時に上下の前歯が接触しない)
- 過蓋咬合(上の前歯が下の前歯に覆い被さっている)
- 叢生(歯が密集して重なり合っている)
顎の位置に大きなずれがある場合は、外科的治療が必要になることもあるため、まずは歯科医師の診療を受けることをおすすめします。
そもそも部分矯正とは
矯正治療には、上下すべての歯を動かす全体矯正と一部の歯を動かす部分矯正があります。一本の歯あるいは数本の歯だけ歯並びが気になる場合は、部分矯正で改善できます。
ただし、部分矯正ができない場合もあるため、まずは歯科医師に相談して検討しましょう。
部分矯正が適用されるケース
部分矯正は歯を動かす範囲が狭く、動かす方向にも制限があるため、重度の症例は治療できません。
以下のような症例であれば、部分矯正で対応できることがほとんどです。
歯の重なりや凹凸が軽い乱杭歯
八重歯も乱杭歯の一種で、軽い場合は治療可能です。
軽度の出っ歯
顎の骨格に原因がある場合は治療できない可能性が高いです。
すきっ歯
部分矯正で埋めた隙間の分、ほかの場所に隙間ができる場合があります。
一部の歯並びに問題がある
1本の前歯のずれ、全体矯正後の一部の歯の後戻りなどの治療ができます。
部分矯正のメリット・デメリット
部分矯正は費用や時間の面などでメリットがありますが、リスクも伴うためデメリットも把握することが重要です。
【メリット】
- 全体矯正より費用が安い
- 治療期間が短い
- 気になる歯だけ治療できる
- 矯正装置の範囲が小さい
- 痛みが少なく患者の身体的負担が小さい
【デメリット】
- 適応症例が限られ、咬み合わせは改善できない
- 後戻りのリスクがある
- 抜歯は必要ない場合がほとんどだが、歯を削る場合がある
部分矯正を検討する際はデメリットも理解し、歯を削りたくない場合は事前に確認しておくとよいでしょう。
部分矯正で使用する装置
部分矯正には、ワイヤー矯正とマウスピース矯正があります。
- ワイヤー矯正:歯に取りつけたブラケット(矯正装置)にワイヤーを通して歯を動かす
- マウスピース矯正:透明なマウスピースを歯に装着して歯を動かす
ワイヤー矯正では、目立たないように白いブラケットとワイヤーもあります。マウスピース矯正は、痛みが少なく金属アレルギーでも装着でき、目立たず取り外しが可能です。
なかでもインビザラインの治療は、ほかのマウスピース装置に比べて歯型採取が1回で済み、通院回数が少ないため患者の負担を軽減できるでしょう。
部分矯正後の後戻りを防ぐための方法は?
部分矯正の後戻りを予防するためには、矯正治療後も適切なケアを続けることが重要です。
歯科医師の指示に従い、リテーナーの正しい使用、定期検診の継続、舌癖などの悪習慣の改善を心がけ、理想の歯並びを維持しましょう。
保定期間を正しく守る
後戻りの一番の原因は「リテーナーの装着不足」 です。つまり、指示通りにリテーナーを装着することで、後戻りのリスクを大幅に減らすことができるでしょう。
保定期間は矯正期間と同じ、またはそれ以上の期間が必要とされ、1日20時間以上の装着が推奨されています。
取り外しができるリテーナーは、食事や歯磨きの際は取り外し、それ以外の時間は装着することが一般的です。
特に、矯正装置を外してから半年程度は歯が不安定な状態になり、後戻りしやすいため、必ず歯科医師に指示された保定期間を守りましょう。
定期的にメンテナンスを行う
矯正治療の終了後は、定期的な通院とアフターケアが欠かせません。
リテーナーは、歯並びや顎の状態によって調整や取り替えが必要になる場合があります。
また、歯並びは咬み合わせや舌癖などによって日々少しずつ変化しています。そのため、保定期間が終了した後も後戻りのリスクがゼロになるわけではありません。
保定期間が終了しても、定期的な診療を受けて歯並びや咬み合わせのチェックを行い、虫歯や歯周病の予防をすることが重要です。
悪習慣の改善をする
矯正治療で歯並びを整えても、以下のような悪い癖が残っていると後戻りにつながるため、改善が必要です。
- 歯ぎしりや食いしばりといった噛み癖
- 舌を前に突き出す舌癖
- 噛む力が強い
- 口呼吸
- 唇や爪を噛む
- 片側に偏って噛む
- 頬杖をつく
- うつ伏せや横向きで寝る
このような悪習慣は歯に力が加わり、歯並びが元に戻ってしまいます。
噛み癖はマウスピースの使用、舌癖はMFT(口腔筋機能療法)といった対処法があります。
注意して直る癖は意識して改善に努め、きれいな歯並びを維持しましょう。
全体矯正も検討する
部分矯正は適応症例が限られるため、歯並びの状態によっては希望しても治療を受けられないケースがあります。
無理な部分矯正は、矯正後にバランスが崩れて逆効果になることもあるため、おすすめできません。
一方、全体矯正は重度の症例まで対応でき、奥歯まで矯正可能なため全体の咬み合わせを改善できるメリットがあります。
部分矯正では治療が難しい症例や咬み合わせまでしっかり治療したい場合、また費用や治療期間に余裕がある場合は、全体矯正を検討するのもよいでしょう。
後戻りが起こってしまったときの対処法
軽い後戻りであればリテーナーを再び装着することで対応できることもありますが、再矯正が必要な場合もあります。
後戻りが起きた際は、自己判断で放置してはいけません。早めの対応が重要になるため、すぐに歯科医師の診療を受けるようにしましょう。
リテーナーの再装着
リテーナーを装着していても後戻りが起こる原因として「リテーナーの装着不足」のほかに「リテーナーの変形や破損」が挙げられます。
後戻りが起きた後も合わなくなったリテーナーを無理に装着していると、歯や歯茎に負担がかかるため、注意が必要です。
軽度の後戻りの場合は、リテーナーの作り直しで後戻りの進行を防げる可能性があるため、早めに歯科医院を受診しましょう。
ただし、リテーナーの作り直しは後戻りの進行を抑えるための対処法であり、後戻りしてしまった歯並びをきれいに治すには再矯正が必要です。
再矯正治療
後戻りをしてしまった歯並びを再びきれいな状態にする場合は、再矯正が必要です。しかし、再矯正にはさらなる費用や時間がかかることは避けられません。
また、長期にわたって歯に矯正力が加わることで、歯や歯茎に負担がかかります。結果、歯根吸収(歯根が吸収されて歯根が短くなる現象)や歯肉退縮(歯茎が退縮する現象)などのリスクも考えられます。
まずは歯科医院を受診して後戻りの状態を確認し、再矯正にかかる費用や時間をかけてでも再矯正すべきかどうか歯科医師と相談するとよいでしょう。
部分矯正の後戻りに関するよくある質問
部分矯正は全体矯正よりも気軽にできるイメージがあり「部分矯正ならやってみたい」と考える人は少なくありません。
しかし、部分矯正の後戻りに不安があってなかなか踏み出せない人もいます。部分矯正を検討中の人は、以下のよくある質問をぜひ参考にしてください。
後戻りしてしまった歯並びは自力で治せるの?
後戻りしてしまった歯並びを治す方法は「再矯正」しかなく、自力で治すことはできません。後戻りした歯並びを無理やり自分で治そうとする行為は非常に危険です。
自己判断で指や器具を使って歯を押したり、無理やり歯に力をかけたりすると、歯根吸収によって歯が抜けやすくなるリスクが高まります。
また、以前使用していたマウスピースで治そうとすることもやめましょう。後戻りが起きた歯並びが、マウスピースの型に合うとは限りません。後戻りが起きたら必ず受診するようにしましょう。
部分矯正でリテーナーの期間はどれくらい?
リテーナーの装着期間は症状や年齢などによって個人差がありますが、一般的に約1〜3年とされています。
1日20時間以上の終日装着を約1年、その後も就寝時の装着を約1年は続けるようにして、保定期間が終了しても可能な限り装着することで後戻りを予防できます。
保定期間が長いほどきれいな歯並びが維持できるため、夜間の装着だけでも続けた方がよいでしょう。
定期的な受診で歯並びを確認して、歯並びに合ったリテーナーを正しく装着し、医師の指示どおり保定期間をきちんと守ることが大切です。
まとめ
部分矯正は治療期間が短く費用も抑えられますが、適応症例が限られることや後戻りのリスクもあります。
後戻りを予防するためには、リテーナーの装着や定期受診を怠らないようにしたり、後戻りの原因になる悪習慣を改善したりすることが重要です。
すでに部分矯正をした方も、将来的に部分矯正を検討している方も、後戻りの原因や予防、対処法について理解しておきましょう。
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