歯茎が下がってしまうことで、実年齢よりも高く見られることがあります。実際、歯茎は20代・30代でも下がることがあります。
歯茎が後退することを専門的に「歯肉退縮(しにくたいしゅく)」と呼び、幅広い年代の歯にまつわる悩みの1つです。歯肉退縮は放置すると見た目はもちろん、歯が抜ける危険性があります。
きれいな歯並びを実現するには、歯だけでなく歯茎にも目を向けることが大切です。今回は歯茎が下がる原因や、治療方法、予防方法について紹介します。
歯茎が下がるのを自力で戻すのは可能?
歯肉退縮は、程度によって自力で戻すことが難しいケースがあります。しかし、症状が初期段階であれば、自力で戻すことも可能です。
ここでは自力で改善できる方法を紹介しますので、気になる方はぜひ試してください。
歯茎マッサージ
歯茎マッサージは、指の腹や歯ブラシを使って歯茎をもみほぐす方法です。歯茎マッサージをすることで、歯茎全体の血行や唾液分泌が促進されます。
具体的なマッサージ方法は、指と歯ブラシの2パターンがあります。以下に詳しい説明を記載しますので、ぜひ試してください。
なお、マッサージを行う前には歯磨きをして、表面に付着した汚れや食べカスを取り除きましょう。
指でする場合
ステップ1:指の腹を歯茎に当て、小さな円を描くように動かし、前歯から奥歯に向かってゆっくりと進んでいく。これを上下左右ともに行う。
ステップ2:親指と人差し指で歯茎を挟むようにつまむ。前歯から奥歯に向かって擦るように指を動かしていく。この時、あやまって爪で歯茎を傷つけないよう気をつけましょう。
歯ブラシでする場合
ステップ1:歯ブラシを鉛筆のように持つ。歯に対して45度の角度で、毛先を歯と歯茎の間に軽く当てる。
ステップ2:軽く当て、ゆっくりと歯ブラシを震わせるように動かす。このときゴシゴシと激しく力を入れて動かすと、歯茎が傷つく恐れがあるため、注意しましょう。
歯磨き粉を使ったケア
下がってしまった歯茎を引き上げるために、歯茎の引き締め効果が期待できる歯磨き粉を使用するのがよいでしょう。
歯茎の引き締め効果が期待できる成分は、歯茎の腫れや出血といったトラブルを予防する効果や、歯茎の血流を促進し、歯茎全体の活性化が見込まれます。そのため、歯周病の予防にもなります。
日々のお手入れはとても大切です。適量を歯ブラシに取り、歯はもちろん、歯茎のブラッシングを忘れずにしましょう。
口腔ケアの徹底
さまざまな要因で歯茎は下がりますが、その多くが歯周病の原因と考えられています。
歯磨きをするうえで、歯の表面に付着した汚れや着色も大切ですが、歯と歯茎の間(歯周ポケット)や歯と歯の間を清潔にすることが最も効果的です。
口腔ケアをする際、歯磨きはもちろん、フロスや歯間ブラシを使い、歯ブラシでは除去できない汚れを取り除きましょう。
徹底した口腔ケアが歯茎を下げないための予防策です。清潔に保つようにしましょう。
ビタミンを意識した食事
数ある栄養素の中で、ビタミンは健康な歯を保つうえで重要な栄養素です。
ビタミンAは口内の粘膜を正常に保つ働きをします。また、歯茎を形成するうえで重要なコラーゲンの合成に必要なビタミンC、骨の代謝に欠かせないビタミンD。細胞の再生や成長、エネルギーを回復させるのに必要なビタミンB群など、健康的な身体を作り上げるうえで、ビタミンは必要不可欠です。
このようにバランスのよい食事を取り、ビタミンを積極的に摂取することで、健康的な歯と歯茎を保つことができます。
新陳代謝を上げる健康管理
新陳代謝とは、古い細胞が新しい細胞へと入れ替わり、組織が若返ることを指します。過去にした擦り傷が、日が経つにつれて治っていくのは新陳代謝によるものです。
身体の新陳代謝が上がれば、血流はよくなります。身体が健康でいると、免疫力も高まるため、細菌に抵抗する力がつきます。
歯茎が下がる原因
さまざまな原因によって歯茎は下がってしまいます。こちらではその歯茎が下がる原因を7つご紹介します。日頃の生活と照らし合わせてご覧ください。
歯周病
歯茎が下がる原因の1つで、最も多いとされているのが歯周病です。
歯周病が起きる原因は、除去できなかったプラーク(歯垢)がたまることによって、歯茎の内部が炎症を起こす病気です。
炎症が続くことで、歯を支える骨(歯槽骨:しそうこつ)を溶かしてしまいます。そして歯槽骨が溶かされることで、骨の周りを覆っている歯茎は下がっていってしまうのです。
このように、歯周病を放置して症状が進行すると、歯茎は次第に痩せていき、歯が長くなったようにみえるのです。
歯ぎしり・食いしばり
歯ぎしりや食いしばりは日頃の癖で無意識にしてしまう方が多いです。ですが、歯ぎしり・食いしばりは長期間続くと、歯茎を下げてしまう原因の1つになるのです。
歯ぎしり・食いしばりは私たちが想像する以上に歯や歯茎に負担をかけます。特に、就寝中の歯ぎしりの場合、無意識にしてしまっているものの、顎に500kg~1,000kgの力がかかっているといわれています。
そのため最悪の場合、歯が欠けるだけでなく、抜けてしまい、歯茎の炎症をさらに引き起こし、下がってしまう原因になるのです。
もし無意識に歯ぎしり・食いしばりをされているならば、早急に歯科医院でマウスピースなどを作ってもらうなどして、早めに診療を受けることをおすすめします。
強すぎるブラッシング
ブラッシングは歯茎を活性化させるうえで重要なケアの1つです。ただ、過度な力でブラッシングをすると、かえって歯茎を下げる原因になってしまいます。
必要以上に強い力でブラッシングをする癖がある場合、歯茎に負荷がかかることから、傷つけてしまい、出血してしまうことがあります。
予防するうえでブラッシングは大切ですが、正しい方法で行う必要があります。必要以上に力をかけず、歯茎を傷つけないようにしましょう。
ホームホワイトニング後
ホームホワイトニングとは、ご自宅で簡単にできるホワイトニングのことで、低濃度の漂白剤を使い、時間をかけて歯を白くしていく施術です。
ホームホワイトニングに使用される漂白剤は、口内全体に強い刺激を与えることがあります。特に歯茎に漂白剤が付着した場合、歯茎に痛みが伴ううえ、歯茎が下がっていってしまいます。
漂白剤によって歯茎が下がる以外にも、知覚過敏や歯茎が自然と白くなってしまうリスクが高くなるため、注意が必要です。
ホームホワイトニングを行う際には、適切な指示に従い、注意深く行いましょう。
矯正治療後
矯正治療を行った場合、歯茎が下がってしまうことがあります。
歯列矯正は矯正装置によって歯を動かしていきます。その際、これまで密接していた歯がきれいに並ぶのに応じて、歯茎も適切な位置に動くことから歯茎が下がったように感じることがあるでしょう。
また矯正器具に不具合が生じた場合や、必要以上の力で矯正を行った場合、過剰な力が歯茎に加わるため歯茎が下がることがあります。
このような場合は、矯正器具を調整することで治ることがあるため、歯科医師に相談してみることをおすすめします。
喫煙
喫煙は歯肉退縮になる原因の1つです。
喫煙によって体内には一酸化炭素やニコチンが入っていきます。一酸化炭素やニコチンは血の巡りを悪くする働きがあります。その働きが原因となって、歯茎が萎縮してしまうのです。
また、一酸化炭素やニコチンは、歯周病のリスクを高めるほか、歯茎の慢性的な栄養不足や酸素不足を引き起こすため、気になる方は禁煙しましょう。
加齢
年を取るにつれて、筋肉が落ち、骨がもろくなるのと同じく、歯肉も衰えていくため、歯茎は下がっていきます。
口腔ケアの徹底はもちろん、規則正しい生活や栄養バランスのとれた食事を心がけることで、歯肉退縮は遅らせることができます。
いつまでも元気に食事ができるよう、適切な予防で歯肉退縮を防ぎましょう。
歯茎が下がることによる悪影響は?
歯肉退縮によって、生活の中でさまざまな悪影響が起こります。ここではそのような悪影響を紹介します。
口元の見た目が悪化する
歯茎が下がることで、歯と歯茎のバランスが崩れ、印象が悪くなることがあります。
歯と歯茎のバランスがよい場合、人は周りに対して若々しい印象を与えることができます。しかし歯肉退縮が進行し、歯の根本が見えるようになると、人は老けた印象を与えることになるでしょう。
根本が見えることで、見た目はもちろん、衛生状態も悪くなるため、早急な治療が必要です。
食べ物が詰まりやすくなる
歯肉退縮は見た目の変化はもちろん、衛生面にも変化を与えます。
特に歯と歯の間に食べ物が挟まってきた、食べカスが詰まるようになったと感じる方は、歯肉退縮の可能性が高いでしょう。
歯茎が下がることによって、歯と歯の間に隙間ができます。特に根本に隙間ができやすくなり、その部分から汚れや食べカスが詰まるため、虫歯や歯周病などにつながるケースがあります。
歯磨きだけでなく、フロスや歯間ブラシを使って徹底した口腔ケアをするよう心がけましょう。
虫歯や知覚過敏が発生しやすい
歯茎が下がることによって、食べカスが歯周ポケットに詰まりやすくなります。同時に、歯垢や歯石が溜まりやすくなるため、虫歯になるリスクがグンと高まります。
歯根に虫歯ができた場合、抜歯にしなければいけないケースもあるため注意が必要です。
また、歯茎が下がると根本が露出するため、知覚過敏となり、外部からの刺激を受けやすくなります。知覚過敏は進行すると、冷たいものだけでなく、歯ブラシが歯に当たるだけでも痛むことがあります。
歯茎が下がる悪影響の中で、最も起こりやすい症状の1つであるため気をつけましょう。
歯を失うリスクの増加
歯茎の1番の役割は歯を支えることです。しかし、歯肉退縮が進むことによって、歯の根本部分の象牙質が露出してしまいます。
象牙質が露出すると、歯が割れる可能性が高まります。歯肉退縮が進行すると根元がさらに露出し、やがて歯周病菌が顎の骨を溶かしていきます。その結果、歯は脆くなり、ここまで進行すると、最悪の場合は抜歯が必要になることもあるでしょう。
歯肉退縮の進行が激しい場合、インプラントによる治療を受けることができないことがあります。歯を失わないためにも、早急に歯科医院を受診し、治療を受けましょう。
歯茎が下がったときの治療法
現在の医療技術だと、歯茎が下がってしまった場合は外科的手術を含めてさまざまな方法があります。
ここでは、その治療法を4つ紹介します。気になる方はぜひ参考にしてください。
口腔衛生の改善
歯茎が下がる1番の原因は、プラークの蓄積による歯周病です。
丁寧な歯磨き、フロスや歯間ブラシを使うことで、プラークの蓄積を防ぐことができます。
ただし、口腔衛生はセルフケアだけでは限界があります。時にはクリニックで歯のクリーニングを受け、自分では取り除けないプラークを取り除きつつ、効果的な歯の磨き方を指導してもらいましょう。
抗生物質の処方
プラークなどの汚れが歯周ポケットにたまることで歯茎は炎症を起こし、歯周病となります。そして歯肉退縮は進んでいくのです。
歯周病の炎症を抑える治療として、抗生物質を処方するケースがあります。抗生物質は炎症を抑える効果はあるものの、歯周病の根本的な原因を抑えるわけではありません。
歯周病を発症している場合は、歯科医師に診てもらい、治療を進めていきましょう。
ヒアルロン酸の注入
歯肉退縮の治療法の1つに、歯科用ヒアルロン酸を使用する治療法があります。
これは歯肉にヒアルロン酸を入れることによって、歯肉自体を膨らませ、見た目の問題を解消するというものです。下がった歯肉だけでなく、歯と歯の隙間が埋まるという効果もあります。
ただし、時間が経つにつれて注入したヒアルロン酸は体内に吸収され、元の状態に戻ってしまいます。ヒアルロン酸注入は根本的原因に対処するものではないため、定期的に注入する必要がある治療方法です。
また、歯茎の状態によっては注入ができないため、もし受けたい場合は事前に歯科医師と相談するようにしましょう。
外科的処置
歯茎が下がった際、最も効果的な治療方法として外科的処置が挙げられます。そのなかでもよりメジャーな「歯周組織再生治療法」の中から3つを紹介します。
エムドゲイン法
エムドゲイン法は歯周組織を再生させる治療方法です。
一般的に歯周病によって溶けてしまった歯槽骨などの組織は自然に元に戻ることはありません。
そこで歯の根本を切り開き、「エムドゲイン」というタンパク質のゲルを塗ります。このゲルを塗ることで、歯が生えてくるときと同じ環境を再現し、歯周組織の再生を促していきます。
GTR法
GTR法は歯周ポケット内の歯垢や歯石を取り除き、人工膜を歯周病の原因部分に挿入するという治療方法です。
ただし、GTR法は比較的難易度の高い手術のため、エムドゲイン法を用いることが一般的です。
骨移植
歯茎が下がっていく大きな要因が、歯を支える顎の骨がなくなってしまうことにあります。
骨移植は、まず自らの骨や人工骨を顎に移植します。そしてその骨から周囲組織の再生を促すことで、歯茎を底から盛り上げるという治療方法です。
まとめ
歯茎は加齢や歯周病などさまざまな要因によって起きます。進行が激しい場合は、歯が脆くなるなど、身体に悪影響を及ぼします。
進行の激しい歯茎は自力で治すことはできません。健康な歯茎に戻すためには外科的処置や治療が必要となります。
そのため、歯肉退縮は早急な処置と日頃から意識をして予防することが大切です。
日々の口腔ケアや適切なブラッシング、定期的な歯科検診、健康に気をつけた生活習慣を心がけることで、歯肉退縮をできるだけ遅らせるようにしましょう。
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